城山病院放射線科は、皆さんがよくご存じの一般撮影、骨塩定量測定、消化管透視、腎尿管の排泄性造影検査、CT検査、MRI検査、PET検査、血管造影などの検査に加え、治療にも積極的に力を入れているのが大きな特徴です。
行っている治療には、体外衝撃波結石破砕、ガンマナイフ放射線手術、血管内治療外科(Interventional radiology:IVR)があります。体外衝撃波結石破砕は、泌器科医と協力して腎尿管結石の破砕を行い(別項参照)、ガンマナイフ放射線手術は、 当院の脳・脊髄・神経センターにて脳神経外科医と協力して脳腫瘍、血管奇形などの治療(別項参照)にあたっています。またIVRは、選択的血管造影カテー テル術を応用した治療法で、主に肝がん、転移性肝腫瘍を対象としています。
当院では、専門のスタッフが、最先端の装置を駆使することによって的確な診断を迅速に行い、それによって患者さんが適切な治療を早く受けていただけるよう、"早期診断、早期治療"をモットーに診療に従事しています。さらに、これらの検査を受けられる患者さんの不安や苦痛をできる限りやわらげるよう、スタッフ一同努めています。
放射線科で従事している専門のスタッフは、常勤医師2名、診療放射線技師24名、看護師1名、事務3名です。
髙坂 功 日本放射線学会診断専門医 PET核医学認定医 |
笹垣 美明 |
今後、地域医療に従事している先生方とのカンファレンスも予定しております。その際は、随時お知らせ申し上げます。
常勤医師の所属学会、研究会として、日本医学放射線学会、日本磁気共鳴医学会、日本乳癌学会、日本核医学会、日本放射線腫瘍学会、日本小児放射線学会、断層映像研究会、三次元CT・MRI研究会、医用デジタル動画像研究会、関西Radiology-update講演会、近畿MRI研究会、北摂MDCT研究会、大腸疾患研究会、関西循環器イメージング談話会、北大阪脳神経画像研究会などがあり、多くの会で世話人を務めています。また毎年、北米放 射線学会、ヨーロッパ放射線学会などの海外発表も行っています。
診療放射線技師の所属学会、研究会として、日本放射線技術学会、日本放射線技師会、日本定位放射線治療学会、堺画像研究会などがあり、いくつかの世話人を務めています。
主に全身の骨や乳房・胸部・腹部をX線で撮影する検査でFPDシステムを採用し、患者さんの最適な条件で撮影しています。装置は4台設置し、随時検査を行い、特に平成18年7月から稼動し始めた乳房用X線装置は乳がんの早期発見に貢献しています。
X線を使って、腰椎と大腿骨頸部の骨密度を短時間で計測します。特に高齢者、女性の方に起こりやすい骨粗しょう症の診断に有用で、骨折の防止に役立っています。
いわゆるバリウム検査で、バリウムと空気を経口的あるいは経肛門的に注入し、工夫して撮影する低侵襲な検査です。主に下咽頭、食道、胃、大腸の潰瘍、ポリープ、狭窄、がんなどを検索する方法です。
静脈から造影剤を注入し、腎臓、尿管に流れていく造影剤の様子を観察します。主に、腎臓、尿管の結石、腫瘍の診断に用いられます。
X線を使用して体の中の様子を断層画像化する検査です。当院では64列のMDCT2台が設置され、それらを用いた高速撮影は、検査時 間の短縮を可能にし、患者さんにとって優しい検査となっております。また造影剤を用いた精度の高い3次元画像は、微小脳動脈瘤の早期発見(図1)、大動脈 瘤などの血管性病変の診断、さらには胃がん、大腸がんなどの手術支援画像(図2)として活用され、この手法は多くの方面から注目を浴びています*。
* 紹介された記事:1)Clinician53巻552号p780〜789(2006年), 2)Digital medicine6巻4号p58〜63(2006年)など多数
磁石と電磁波を使用して体の中の様子を断層画像化する検査で、X線を使うCT検査に比べ、さらに低侵襲です。
当院では1.5テスラ、3テスラMR装 置が稼動しています。特に日本でも数少ない3テスラMRI装置は、脳の中の詳細な情報を得ることができ、拡散強調画像による脳梗塞の早期診断(図3)、磁 化率強調画像による微小脳出血の検出(図4)、3次元画像による脳血管の評価(図5)、血流評価、脳腫瘍の良悪鑑別に用いられます。
とくに3テスラMRI 装置を用いた当院の脳ドックは従来の1.5テスラMRIに比べ、微小脳動脈瘤の検出に優れています。さらにトラクトグラフィーといった新しい手法を用いて運動神経と腫瘍、脳内出血の位置関係を把握し、運動機能を温存する脳神経外科手術をサポートしています(図6)。また早期アルツハイマー病診断支援システ ム(VSRAD)を使用することによって、脳の萎縮程度を定量化し、アルツハイマー病の早期診断に役立てています(図7)。
ぶどう糖であるフルオロデオキシグルコース(FDG)といわれる放射性核種を静脈内注射し、ぶどう糖をとり込む"がん細胞"を検出する方法で、がん検診としても注目されています。
当院でもがん検診が行われ、当院ではCT装置、PET装置が融合した最新の装置で、"がん細胞"の位置をより詳細に知ることができ、がんの検出に役立っています(図8、9)。
放射線科で行われる血管造影検査は、主に鼡径部(太もものつけ根)からカテーテルといった細い管を血管内に挿入し、臓器の細い血管を明瞭に描出し、これにより腫瘍の発生部位の同定、腫瘍の性状、ひろがり診断を行います。
近年、カテーテルの開発も目覚しく、従来ではかなり困難であった高度な手技が、より安全かつ容易に行えるようになってきています。一方、IVRは、カテーテルを用いた治療で、血管を閉塞する塞栓術、血管を拡張する血管形成術、動脈内薬 物注入法、血管内異物除去術などにあります。
・一般撮影、・消化管透視:下咽頭食道透視、胃透視、注腸透視、CT検査、MRI検査、PET-CT検査、腎尿管排泄性造影検査
図1 3次元CT画像による微小脳動脈瘤の発見
3次元CT画像によって数ミリの微小脳動脈瘤を発見することができる。
図2 大腸癌に対する手術支援のための3次元CT画像
大腸がんに関与する血管を明瞭に描出する3次元CT画像は安全かつ迅速な手術の遂行に貢献する。
図3 拡散強調画像による超急性期脳梗塞の検出
従来のMR画像(T2強調画像)(a)では同定困難であった超急性期脳梗塞(→)を拡散強調画(b)は明瞭に描出する。
図4 磁化率強調画像による微小脳出血の検出
従来のMR画像(T2強調画像)(a)では同定困難であった微小脳出血(→)を磁化率強調画像(b)は明瞭に描出する。
図5 3次元MR画像
3次元MR画像は詳細な脳内の構造を描出する以外に脳の血管を詳細に描出する。
図6 MRトラクトグラフィー
脳腫瘍の前方を走行する運動神経を明瞭に描出し、運動機能を温存する脳神経外科手術にとって重要な術前情報となる。
図7 アルツハイマー病早期診断のための支援画像
アルツハイマー病早期診断のための支援画像は脳の萎縮しているところをカラー表示し、さらにそこがどれくらい萎縮しているのか(定量化)を知ることができる。
図8 PET-CT検査
PET検査によって肺がん(→)が偶然発見され、早期に手術が行われた。
図9 PET検査とCT検査の融合画像
融合画像によって上行結腸、胃に腫瘍があるのが明瞭に分かる。