脳・脊髄・神経センター 部長 米田 隆 医師
脳梗塞は片方の手足に力が入らない、物が二重に見える、ことばが出てこないなどの症状がありますが、これは熱中症の症状とも似ており、注意が必要です。米田医師に話を聞きました。
脳の血管に血栓(血の塊)が詰まって血流が途絶え、脳の組織が壊死する病気です。一命をとりとめても重度の後遺症を残したり、寝たきりなどになる人も多い非常に危険な病気です。
しかし、早期に発見すれば血栓を溶かす点滴治療や血管に管を通して血栓を除去するカテーテル治療などで、脳細胞が壊死することを防ぐことができます。近年、カテーテル治療の技術進歩は驚くほど速く、脳梗塞治療の主軸になっています。基本的に鼠径部の動脈から管を挿入し、脳血管まで導き、早ければ10分ほどで血栓を除去できる場合もあります。
熱中症の原因は発汗による体の脱水状態です。脱水が起きると血液中の水分が不足し、血液が粘度を増し、血栓ができやすくなります。また、水分不足のために体内を循環する血液も少なくなり、血栓で血管が詰まりやすくなります。
このように熱中症が脳梗塞を引き起こす原因となっている可能性があるのです。
健康な人は血流が悪くならないように脳の調整機能が働きますが、生理機能が低下している高齢者や血管が硬化したり細くなっている人、高血圧症で降圧剤を服用している人、また不整脈のある人は血栓が詰まるリスクが高
まります。
脳梗塞は片方の手足や顔のまひ、ろれつがまわらない、物がゆがんで見えるなど、ダメージを受けている脳細胞の部位により様々な症状が出ます。また、一過性のことも多く、時間が経てば元に戻ることもあります。これらの症状が熱中症の症状と重なる場合があるので注意が必要です。
先日、救急搬送された患者さんは熱中症だと自分で判断し、しばらく自宅で安静にしておられましたが、手足のしびれが治らず、救急車を呼ばれました。MRI検査をすると脳梗塞を発症しており、すぐに治療し、事なきを得ました。
脳梗塞はCT検査やMRI検査ですぐに判断できます。何らかの症状があれば決してご自分で判断せず、専門医を受診してください。
加齢による血管の硬化を止めることはできませんが、生活習慣や食事、適切な治療で進行を抑えることはできます。また、脳ドックを定期的に受診する事により、脳血管の異常を早期に見つけることができます。検査で脳梗塞や動脈瘤が見つかった場合でも、すぐに手術というわけではありませんが、血管を詰まらせないように、または動脈瘤破裂を予防するなどの適切な治療を開始します。早期発見、早期治療が一番大切です。
地域の方が安心して生活していただくために、私たちは開業医の先生方との連携が重要と考えています。特に脳梗塞などの疾患は発症すれば時間との戦いです。救急外来は24時間、専門医が待機しており、運び込まれた患者さんの検査を迅速に行い、治療を始められる体制を整えています。当センターのこのような取り組みや、疾患の専門的な情報を、開業医の先生方にお伝えしたいと思っています。