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顔の痛み、顔の歪みは早めに治療を

脳神経減圧術研究所 所長
近藤 明悳 医師


顔面に分布する三叉神経と顔面神経が、血管や腫瘍で圧迫されると鼻や口のまわりが激しく痛む「三叉神経痛」や、顔の片側が勝手に歪む「顔面けいれん」を起こします。
放置するとどんどんひどくなるため、早期診断と治療が必要です。根本的治療は脳神経減圧手術で、これまで2,000例以上執刀した近藤医師に話を聞きました。

三叉神経痛の症状

 三叉神経は脳幹から出て大きく3本に分かれて額、頬、顎周囲の知覚を担う神経です。この神経が、主に加齢とともに曲がってきた血管や、時には腫瘍で圧迫されることで、頬や鼻、口の周辺にピリピリと電気が走ったような痛みを生じます。
 この痛みは体の中で最も強い電撃痛で、洗顔や食事をすることで誘発され、痛みが数秒から数分間続いた後、しばらく治まり、また痛みが出るというサイクルを繰り返します。
 最初は虫歯と勘違いしやすいのですが、神経への圧迫は徐々に進むため話したり、冷たい風を受けただけでも激しく痛みます。診断はMRI検査で行います。

三叉神経痛の治療

(1) 薬物療法
 テレグレートと言うてんかんにも使う薬が有効ですが、痛みが進むにつれて薬の量を増やさなければならず、薬疹や眠気、ふらふらするなどの副作用が出ることがあります。ひいては肝臓機能の低下や白血球減少をきたします。

(2) 脳神経減圧手術
 神経を圧迫する血管を神経から遊離させ、あるいは腫瘍を切除する手術です。この手術は全身麻酔のもと、耳の後方の頭蓋骨に10円硬貨大の穴を開け、手術用顕微鏡で観察しながら圧迫している血管を神経から遊離し、再度圧迫しないように固定します。手術時間は全身麻酔を含めて約4~5時間で1週間程の入院が必要ですが、手術後すぐに痛みが取れ、治癒率は約98%、術後5~10年間の再発率は約3~5%です。
 合併症としては約2%の確率で聴力の低下をきたす場合があります。この手術は非常に難しく、経験が必要な手術であります。

(3) ガンマナイフ治療
 前述の脳神経減圧手術が行えない高齢者の方などに行います。放射線で三叉神経を照射し、痛みを緩和します。治癒率は約60%、再発率は約30%です。

顔面けいれんの症状

 顔全体に広く分布し、顔の筋肉を動かす顔面神経が血管などで圧迫されることで、顔の片側が勝手にぴくぴくとけいれんします。特に人前で緊張するとけいれんが強くなります。
 初期のけいれんは下まぶた周辺のことが多く、疲れ目と勘違いをされやすいですが、けいれんは次第に強まりながら顔の下方に広がり、ひどくなると顔が歪み、目が開けられなくなります。この疾患もMRI検査で診断します。

顔面けいれんの治療

 三叉神経痛と同じく脳神経減圧手術が根本的治療になりますが、顔面の筋肉を一時的に麻痺させるボツリヌス菌を顔面に注射する治療法もあります。
 効果は約3カ月のため、繰り返し治療しなければなりません。長期に渡り注射を繰り返すと、顔の筋肉が萎縮する危険性があります。