
脳・脊髄・神経センター 顧問 梶本 宜永 医師
75歳以上の方は、運転免許の更新時に認知機能検査を受けることになっています。
しかし、この検査だけで運転の安全性を十分に評価できているのでしょうか。城山病院では、高齢者ドライバーを対象に、医学的エビデンスに基づいて運転に必要な認知機能を評価し、安全運転能力を判定し、適切なアドバイスを行う「運転脳ドック」を新設しました。
日本ではほとんど実施されていない新しい取り組みです。
高齢になると、危険をいち早く察知する注意力が低下し、事故につながりやすくなります。さらに、誤った操作に気づいて修正する力が低下すると、ブレーキの踏み間違いなどの重大な事故につながります。
例えば、誤ってアクセルを踏んだ場合でも、通常は瞬時に異常に気づき、ブレーキへ切り替えられます。しかし、この修正のプロセスが低下すると、「何が起きているのか」を把握できず、危険な操作を続けてしまいます。
現在、運転免許更新時の認知機能検査は、主に記憶力を中心とした評価です。しかし、実際の運転事故に関与するのは、注意力や判断力、反応の速さ、誤りを修正する力です。
欧米では1990年代から、こうした運転能力に関わる認知機能の評価について研究が進み、エビデンスが蓄積されています。これらに基づいた評価が、安全運転には重要です。
運転脳ドックでは、認知機能の評価に精通した言語聴覚士が対面で検査を行い、運転リスクを総合的に評価します。結果は5段階で評価し、今後の運転について具体的にアドバイスします。
また、オプションとしてMRI検査により、脳萎縮や隠れ脳梗塞などを評価し、医学的対応についても助言が可能です。
近年、「運転をやめてほしいが本人が納得しない」「キーを隠しても運転してしまう」といった相談が増えています。本検査により、客観的評価に基づいた判断が可能となり、ご本人とご家族双方の安心につながります。
また、職業ドライバーや40~50代の方にも、事故予防や健康管理の指標として活用いただけます。
認知症の原因はさまざまで、適切な治療により改善が期待できるものも少なくありません。アルツハイマー型認知症が多くを占めますが、脳血管障害や正常圧水頭症、甲状腺機能低下症など、治療可能な疾患も含まれます。早期発見と適切な対応が重要です。
城山病院では、AIによる認知症リスク評価を取り入れた脳ドックにより、早期発見と治療に取り組んでいます。また、アルツハイマー型認知症に対しても、新しい治療薬による進行抑制を行っています。
「運転を続けてよいか不安がある」「ご家族の運転が心配」――
そのような方は、一度「運転脳ドック」を受けてみてください。脳ドック担当にてご相談ください。