
脳・脊髄・神経センター顧問
梶本 宜永 医師
世界一の長寿国である日本では今後、高齢者の5人に1人が認知症を発症すると言う予測があります。
昔は「認知症は治らない」と思われていましたが、新薬の登場や検査方法の発展で、早期発見・治療で治せるようになりました。
そして、手術で治せる認知症もあるのです。梶本医師に話を聞きました。
皆さんがご存じのように、認知症は発症する原因により、いくつか種類があります。
三大原因と言われているのが、脳全体が委縮する「アルツハイマー型認知症」(全体の約50%)、脳梗塞や脳出血などが原因の「脳血管性認知症」(同20%)、異常なたんぱくの蓄積によるレビー小体が脳にたまる「レビー小体型認知症」(同10%)です。
この他の原因には、慢性硬膜下血腫や甲状腺機能低下症、脳炎そして今回詳しくお話する正常圧水頭症があります。これらは先述の三大原因とは異なり、原因となる疾患を治療すれば認知症は発症しません。
頭蓋骨内は脳と脊髄以外に髄液という液体で満たされており、この髄液が何らかの原因により通常よりも多くたまった状態が正常圧水頭症です。
70歳以上では40人に1人が髄液がたまり過ぎていることが判明しています。たまり過ぎた髄液は様々な悪影響を及ぼします。まず、過多になった髄液の圧力に脳がダメージを受け、記憶力や気力低下、よちよち歩きになり転倒する、トイレに間に合わない等の症状が同時期に始まります。つまり、たまり過ぎた髄液を人工的に排出する手術(シャント手術)を行うことで、認知症を治すことができます。
この手術は身体への負担は少なく、安全なため、90歳以上の方にも行えます。また、髄液は脳細胞のごみ(アミロイド、タウ)を洗い流す作用があることが最近分かってきました。アルツハイマー型認知症はこれらのごみが脳に貯まることで発症します。
正常圧水頭症による認知症の特徴はよちよち歩きになることが特徴であることから、私は「よちよち認知症」と呼んでいます。問題はこの症状が「老化現象」と勘違いされたり、また、医療機関に受診してもアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症と混同されてしまうケースが多くあることです。
私たち脳神経外科医や神経内科医にとって正常圧水頭症はなじみのある疾患ですが、他科の先生方には十分に認識されているとは言えません。
その結果、治る疾患であるにもかかわらず、見逃されているのです。現にこの疾患は日本で年間約10万人発症していると推計されますが、手術を受けるのは5,000人ほどです。
つまり、20人のうち 19人は見逃されていることになり、非常に歯がゆい思いです。
長生きすれば誰でも少なからず認知症になり、その運命は変えられません。
しかし、早期に専門医を受診し、治療を行うことで人生は変わります。
城山病院では脳血管の病変や脳腫瘍、海馬の萎縮などをMRIで検査する脳ドックを始め、脳内のアミロイドの有無や程度を調べる認知症アミロイドPET-CT検査、認知症リスクAI予測ドックなどを行い、バリエーション豊富な治療を行っています。気になる方は気兼ねなく当院の脳神経外科外来、水頭症外来でご相談ください。