
ロボット手術センター 副センター長
泌尿器科 副部長
松永 知久 医師
高齢化や食生活の変化で、日本でも前立腺がんの罹患率が上昇しており、その数はこれまで 男性で最も多かった大腸がんと拮抗しています。「前立腺がんの手術は今や大都市圏ではロボット手術が標準になってきています」と言う松永医師に話を聞きました。
城山病院では昨年12月に最新の手術支援ロボット「ダヴィンチXi」を導入し、ロボット手術が可能になりました。すでに腎部分切除術や前立腺全摘除術、鼠径ヘルニア手術など33例の手術を成功させています。ロボット手術のメリットは腹腔鏡手術よりもはるかに合併症が少なく安全なことが挙げられます。日本では2012年に前立腺癌に対するロボット手術が保険収載されました。私はロボット手術が拡がるアメリカのハーバード大学にも留学し、2016年に手術支援ロボットdaVinci術者認定を取得しました。この手術をさらに広める事を使命に1月に当センターに赴任しました。今回は前立腺がんの治療についてお話します。
60歳代以降に多く発症し、進行すると骨や肺、リンパ節への転移が多く怖い病気です。初期の自覚症状が少ないことや、外からは触れることができない部分のため進行に気づかず、転移してから判明する場合もあります。検査は血液中にある前立腺の特異的なたんぱく質であるPSA値を測定し、MRIや前立腺生検などの追加検査をするか否かを判断します。病期(ステージ)は細かく分類されており、治療方法はその悪性度だけでなく年齢や体力などを考慮して、ホルモン療法や放射線療法、手術療法などを行います。
従来の前立腺がんの手術は開腹手術、腹腔鏡手術が主でしたが、この腹腔鏡手術がさらに進化したものがロボット手術です。腹部に小さな穴を数か所開け、内視鏡、鉗子を体内に入れ、執刀医は操縦席で3D映像を見ながらコントローラーを操縦して手術を行います。ロボットの鉗子は従来の腹腔鏡手術の鉗子と違い、手首が大きく回転することができ、手振れもなく、カメラも細かい組織までよく見えるため、非常に細かい操作が可能で周辺組織の損傷や出血が非常に少なくなります。前立腺摘出は尿道を一旦切断、縫合しますが、ロボット手術では縫合不全も少なく、また、術後の「尿漏れ」も従来の手術より格段に改善できます。手術時間は約4時間で、入院期間は 10日前後ですが、手術翌日から歩行できるなど離床も早いため、ご高齢の方でも社会復帰が早くQOL(生活の質)も保たれます。
脂肪の多量摂取や肥満、喫煙など生活習慣病の原因となるものとの関連が指摘されています。また、遺伝要因も大きく影響しますので、ご家族に罹患した方がおられる場合は特に定期的なPSA検査が必要です。前立腺がんは初期症状が乏しいですが、排尿困難や頻尿などを認めることもあります。加齢や前立腺肥大症などによる症状か前立腺癌によるものかは検査をしなければわかりません。ぜひ専門医の診察を受けてください。